エアロロードバイク、Madone SL Disc(マドンSLディスク) / Madone SLR Disc(マドンSLRディスク)が発表となりました。このページでは、2020年モデルのマドンシリーズの最新情報・価格・評判(レビュー)・スペック(重量/カラー/ディスクブレーキ搭載車)・インプレッション・フレームセット・Project One(プロジェクトワン / オーダーメイド)・展示車&試乗車などの各情報をまとめて掲載!
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・2020年モデルMadone SLR Disc/ SL Discの特徴
・2020年マドン / Project One(オーダーメイド)モデル
・Madone SLR Discの組み立て風景(2019年表記ですが、2020年と同じモデルです)
2020年モデルのマドンシリーズは、フルモデルチェンジが施され熟成の域に達した2019年モデルをベースに「DHバー搭載モデルの選択可能」「ディスクブレーキ仕様のみのラインナップ」「リーズナブルな500シリーズカーボン設定のSL6Disc」などが焦点となります。
2019年にフルモデルチェンジした新型Madoneに搭載された新たなトップチューブIsoSpeed機構は、ライダーの好みや路面に合わせて振動吸収性を調整できます。新型Madoneは、振動吸収性を最も高めにセットした場合、前モデルと比べて、振動を最大で17%多く吸収できます。また新たにIsoSpeed機構に組み込まれたダンパーは、振動吸収の際に発生するリバウンドを13%抑えることに成功し、最高のライドクオリティを実現しています。
従来モデルのIsoSpeedは、フレームサイズごとにシートチューブの長さが異なるため、フレームサイズの違いで振動吸収性に違いがあり、小さいサイズではやや硬めの乗り味となっていました。新モデルのIsoSpeed機構が搭載されるシートマストのサイズはどのフレームサイズでもほぼ共通であるため、縦方向に全く同じ振動吸収量を得ることができます。
2020年から、Madoneはディスクブレーキのみとなり、リムブレーキ仕様の販売がなくなりました。
2019年からのMadone SLRに採用された新たな「H 1.5」 ジオメトリーは、Trek SegafredoやTrek-Dropsチームと開発された最適なフィットです。フレームのジオメトリーは1種類にしながらも、後述する新しい専用ハンドルバー&ステムのフィットバリエーションを増やすことにより、従来モデルよりも多くのポジションセッティングを実現しています。またジオメトリーを一本化することで、すべてのMadoneユーザーにOCLV700シリーズのフレームを提供することが可能になりました。
Madone SLRは新開発の2ピースの専用エアロバー/ステムを採用しています。多くのステム長、ハンドルバーサイズを選ぶこともでき、バーを前後に5度傾けられることから、従来モデルの26通りの1.5倍以上の40通りのポジションセッティングを実現しています。性別を問わず、多様なレース向けのフィットを一体型エアロコクピットと共に得られるようになりました。
新型Madone SLRは、目に見えないワイヤリング、フロントエンドのエアロ形状、エアロコクピット、内蔵ブレーキ、シートマスト、Control Center、3S エアロチェーンキーパー、最適なウォーターボトルの取付位置、ボントレガー Flare RT テールライトを一体化できるマウント、アクセサリーを一体化できるBlender マウント、ANT+とBluetooth®に対応したDuotrap Sを採用することで、すべてが統合されたシステムを実現しています。
Madone SLRの乗り心地はどんな感じ?当店スタッフがインプレッションを行いました!新型ISO SPEEDの印象や、ディスクブレーキに関する感触などをレビューしています。
※2020年モデルも同じ仕様になりますので、ぜひご参考になさってください。
詳しくは以下のリンク記事をチェック!
リンク:2019 TREK Madone SLR(トレック マドンSLR)インプレッション!
価格:572,400円(税込み)
重量:8.63kg(56cm)
湘南藤沢店でさっそく試乗ができる2020年モデルのMadone SL6 Discがこちら。もう一色が以下の赤いカラーです。
OCLV500カーボンを利用し最高のコストパフォーマンスを実現!フレーム重量1225g、フォークはSLRシリーズと同じ421g。
スライダー式ISOスピード付き。フレームジオメトリーもトップモデルと同様にH1.5です。
詳しくはこちらの特集記事をご覧ください。
リンク:2020年モデル / マドンSL6ディスク特集ページへ
関連リンク:2020年モデルMadoneSL6 Disc紹介ページ
2020年モデルのマドンSL6Discの動画紹介です。
価格:820,800円(税込み)
重量:8.72kg(56cm)
フレームサイズ設定:50 / 52 / 54 / 56 / 58cm
Madone SLR6 Disc Speedの発売にと同時に、「ノーマルハンドル取付アダプター」「SLR専用DHバー」が販売開始となりました。
2019年2月7日 スラムの新型コンポSRAM RED eTAP AXS(アクセス)が発表となり、さらに4月3日、廉価版バージョンとなるSRAM FORCE eTAP AXS(アクセス)が発表となりました。
そのままプロジェクトワンにてオーダー可能!
後12段変速、最小スプロケット10T、そして電動メカです。
ロードバイク(特に上位グレードモデル)はそのご注文数が圧倒的にディスクブレーキ仕様となっている状況下、2020年モデルには多数のディスクブレーキ仕様がラインナップ、相対的にリムブレーキモデルが激減しそうです。特筆すべきはトップグレードフレームとなるマドンSLRシリーズにおいてリムブレーキモデルの生産を今後行わないことを発表したこと。
プロジェクトワンのオーダーで、ハンドルバーオプションにDHバーが追加されます。なお、ノーマルハンドルは選択できません。
※以下の分析は2019年度に行われたため、リムブレーキ仕様についての言及を含みますが、2020年モデルからはリムブレーキ仕様の販売がございません。ディスクブレーキに関する分析のみご利用ください。また、専用DHバー、ノーマルハンドル取付コンバーターもすでに市販されております。
バイク重量は、ライダーが気にする情報である。最もオールラウンドなエアロレースバイクを作るには、空力性能、フ レーム剛性、そしてこれらの延長線上にある、バイク重量のバランスを慎重に取る必要がある。 一般的に、空力性能に優れた翼形状を設けることは、フレーム の剛性と重量を考えると好ましくない。空力性能を高めようとしても、その取り付け位置が不適切であるとバイクフレームが主に受ける荷重条件により、その断面特性はフレーム剛性の向上や軽量化に役立たないからだ。ペダリング荷重は横方向に掛かるが、エアロバイクのフレーム断面はペダリング荷重とは反対の最も効果的でない方向にしなる。通常バイクフレームは、 幅の広い左右対称のチューブ形状を用いて高剛性と軽さを実現する。一方、細身のチューブのバイクは、空力性能に優れている。オールラウンドなエアロレースバイクは、これら2つの相反する特性をバランスよく実現する必要がある。空力性能や速さだけ重視し、それに適した剛性や優れた走りを実現させるとフレームが重くなってしまう。軽さを重視すると、空気抵抗を増やす幅の広いチューブ形状で遅いフレームが出来上がってし まう。
図3. FEA シミュレーション(ひずみエネルギー密度)。数多く反復した分析 結果の一例。
大きなひずみが掛かる部位が表示され、構造的効率を解析 するために役立つ。
新型Madoneに対するトレックの目標は、前Madoneの空力性能を同水準にし、リムモデルと同等またはそれ以上に軽くしつつ新機能を搭載させること。振動吸収性を調整できるテクノロジ ー、リバウンドバンパー、分割したバーとステム、そしてその一新した外観ですら、最高にオールラウンドなレースバイクの特徴の一部である。ディスクブレーキモデルは、先述の特徴を備えた状態で、目標重量を7.5kgに設定。
この目標を達成するため、新型Madoneのフレーム重量が前Madoneと同じか軽くなるよう、トレックのこれまでの経験と知識を絞りだした。膨大な数の有限要素モデルを解析し、フレームの細部を微調整し、できるだけ重量を削減しつつ、空力性能に求められる条件をバランスよく実現。設計者はシミュレーションの結果や予測に満足すると、全てのカーボン製コンポーネントを製造する上での可能性を探った。新型Madoneのカーボンコンポーネントラミネートのあらゆる細部がこのバイクの目標重量を達成できるよう、トレックはサプライヤーと調べ上げた。この結果、ライダーにさらなる利点をもたらす特徴が追加され、前Madoneと同じ軽さのバイクが誕生した。
図4. FEA シミュレーション(縦方向の振動吸収性)。
数多く繰り返し実行した分析のうち、サドルに垂直荷重が掛かった状態でシートマスト部にどのような力が作用するかを示した図。
新型Madoneには、Domane SLRの振動吸収性を調整できる技術が搭載されている。Madone の調整式IsoSpeedテクノロジ ーは、Domane SLRのように互いに組み込まれた2つのフレーム 部から構成されるが、空力性能を高めるためMadoneではトップチューブへと移行された。また、このことで全フレームサイ ズでより均一な振動吸収性を実現するようにもなった。そして、 ダンピング特性を生むハードウェアをシートチューブ裏側に搭載。
この2つのフレーム構成部品はトップチューブの中間にボル トで固定されている(図5参照)。これら2部品の間には、スライダーを前後に移動させるための空間があり、シートマスト部はIsoSpeed 技術により上側がバイク後方へしなると、下側の構成部品を上へとしならせる。メインフレームのトップチューブはシートマスト下側とは独立ているため、シートマストを上向きにしならせる。スライダーはシートマストとメインフレームのトップ チューブとの両方に接触し、ライダーの好みに合わせてシートマ ストの上向きへのしなり量を調整できるようにする。スライダーをフレーム前方に移動させるとシートマストがしなるための空間が広くなるため、振動吸収性が増える。スライダーをフレーム後方へ移動させると、スライダーがその前にある空間でのしなりを抑制するため、振動吸収性は低くなる。
主観テスト走行、計測機器を付けてのテスト走行、そして実験室でのテストを行った。その結果、ライダーがサドル部で縦方向の 振動吸収性を調節できているとの報告を受け、この新たな調整式振動吸収テクノロジーが予想通り機能していることが実証された。
図5. 新型Madone 調整式振動吸収テクノロジーのCAD モデル
(上 - フレ ーム中央断面図、 下 - トップチューブとIsoSpeedを下から見た図
図6に示す通り研究室で実施したサドル部の縦剛性のテストで、サイズ56のフレームの振動吸収性においてスライダーの調整範囲では、およそ119N/mmから175N/mmまで変化した。 前Madoneの縦剛性はおよそ144N/mmであったため、新型 Madoneの振動吸収性は旧型と比べ17%高く、また22%低くできるということである。
スライダーを最前部から中間まで動かすと振動吸収性の変化は大きく、その先となる中間から最後部まで動かすと変化はより小さいことがわかる。
もう一つの利点は、全てのフレームサイズで縦方向の振動吸収量をほぼ統一させられること。これは、着脱可能なシートマスト 部が全てのフレームサイズでほぼ同じ大きさであるためだ。通常 のロードバイクであれば小さいサイズのフレームは縦方向の振動吸収性に乏しく、フレームのサイズが大きくなるにつれて、徐々に剛性が下がっていく。フレームのチューブが長いと(フレームサ イズが大きいと)しなりやすく、短いと(サイズが小さいと)しなりにくい。これは一本の長い棒状の物を曲げようとする考え方を思い浮かべると分かりやすい。例えば長くて薄い金属製チューブを手に持っているとしよう。短いチューブより長いの方がはるかに曲げやすいはず。シートマスト部の長さは全フレーム共通であるため、この新たなテクノロジーなら全てのサイズで一貫した振動吸収量を得られるのである。
図7に、全フレームサイズの最小および最大の振動吸収量を示す。フレームサイズが大きくなると縦剛性が若干下がる傾向にある。これはフレームサイズが大きくなると、トップチューブが長くなるためである。従来のバイクだと縦剛性はフレームサイ ズにより30-40%異なる。新型Madoneではその差が3-6%程度。図には無いが、50cmのフレームサイズだけを比較(前 vs 新 型)すると、新型の振動吸収性の方が27%増えている。
図7. 全フレームサイズにおけるフレーム後部の縦剛性(最大および最小) フレームサイズ [CM]
トレックのIsoSpeed初となるダンパーを搭載させ、シートマストのリバウンドを制御できるようにした。これまでのIsoSpeed搭載フレームでは大きな衝撃がフレームに加わるとシートマストがしなり、衝撃をいなして快適さがもたらされることで乗り手は利点を体感することができた。この動きはメインフレームと独立しているが、従来のフレームであれば衝撃そのものがメインフレームに掛かる。しかし、シートマストが元の位置に戻るリバウンド段階では、シートマストの戻る速さにより乗り手はサドルから体が離れる感覚を得ることがある。ときによりこの感覚はサドル上のポジションを調整し直さない といけないため不快で好ましくなく、長時間続くと疲労が生じることもある。このリバウンドの速さは衝撃の大きさにより速くも遅くもなる。IsoSpeed システムにダンパーを搭載することにより、乗り手が感じるであろうこのリバウンドを抑制し軽減させることができる。
図8. Madone ダンパーのCAD モデル(左 - ドライブ側から見たメインフレームの透視図、右 - フレーム中央断面図)
このダンパーは、エラストマーダンパー(赤)、ダンパーハウジング(緑)、フレームキャリッジ(オレンジ)の3パーツから主に構成 される。これらのパーツはシートチューブ裏側のカーボン製メインフレームに取り付けられ、上の図8に示す通りシートマスト部の凹みと接している。メインフレームを見やすくするため透明で描写した参照図において、フレームが通常の状態にあると、ダンパーはネジでシートマストに押し付けられている。このネジを緩めることでダンパーを押し付ける力が解放され、調整用スライダーの位置を再調整することもできる。スライダーの位置が決まれば、あとはネジをダンパーキャリッジの一番奥まで締め込みダンパーを圧縮させればよい。この作業は微調整が不要で、位置を決めたら固定するというシンプルなものだ。路面から衝撃を受け、サドルからシートマスト部に荷重が掛かると、シートマストは図8またはバイクのドライブ側から見るとわかるように、反時計方向にしなる。この動きがダンパーをわずかに圧縮させ、リバウンドの動きに備える。シートマストが元の位置に戻り出すとダンパーに再び荷重が掛かり、リバウンドの勢いを遅め、そのエネルギーを吸収する。
トレックは研究室での静的テストだけでなく、動的テストを用いてバイクの動きをさらに深く理解することに務めた。静的テストで発生する現象は、ライダーがさまざまな路面環境で体感することと必ずしも直結しないためである。この工程を支え環境変化を最小限に抑えるため、トレックは新たに開発したトレッドミルの上で測定機器を取り付けたバイクで走ってテストし、調整式振動吸収テクノロジーおよびダンパーテクノロジーの実証実験を行った。
このトレッドミルではさまざまな路面環境を再現することができる。大きなくぼみや段差、アスファルト、グラ ベル、石畳などは、トレックがこの実験環境下で再現できる路面の一例である。3軸加速度計や直線変位センサーを前Madoneおよび新型 Madoneに取り付け、両者の差を記録した。これら装置は、リアアクスルとサドル間のしなり量を測定し、このしなり量がすなわちバイクのリアサスペンショントラベルとなる。 トレックはデータを収集して新たな調整式振動吸収/ダンパーテクノロジーが乗り手に与える効果を示し、これが快適さとど のような関係性があるのかを調べた。社内のテストライダー3名 にトレッドミルで5種類の路面を走らせ、1回ごとに意図を変えて合計37回のテストを行った。
図9. ピーク間のしなり量、新型Madone vs 前Madone
(スライダー 位置1 = 最も振動吸収性に優れた位置、スライダー 位置2 = 中間、スラ イダー位置3 = 最も固い位置)
トレッドミルの速度やIsoSpeedの調整用スライダーの位置など の不確定要素が、このテスト計画では考慮されている。 図9は、リアアクスルとサドル間の、ピーク間の平均しなり量を示している。ここで、サドルがリアアクスルに向かって押し込 まれると考えよう。「1つのコブ」と「縁石から降りる」テストの結果は、図6で示した研究室での静的テストの結果と最も合っていることがわかる。図9は前Madoneの動的振動吸収性が新型 Madoneの動的振動吸収性の調整範囲内にあることを示している。さらに詳しく見ると、調整用スライダーを動かした時、圧縮力が概ね一貫して変化していることがわかる。なお、スライダー1は最も振動吸収性に優れる位置、スライダー3は最も固い位置 を表す。最後に、コブのサイズが大きくなるほどスライダーの効果も明らかに大きくなる。これは衝撃が大きくなるほど乗り手は高い振動吸収性を求めるため、特に重要な結果である。
図10. 25mm高の1つのコブの振動波形、新型Madone
(スライダー 1-3、ダンパー有/無)(スライダー 1 = 最も振動吸収性に優れ た位置、スライダー 2 = 中間、スライダー 3 = 最も固い位置)
図10は、調整用スライダーを各位置にセットした新型Madoneで「1つのコブ」を走った時の振動波形を示している。この波形は「1つのコブ」を走るテストを複数回行い、テストごとの波形を平均化し、衝撃を受ける直前に沈み込みを標準化させてこれらの波形を重ねることで生成されている。この図は新型 Madoneのスライダー各位置の効果を、先ほど図9で示した傾向とは異なる形でより見やすく示したものである。図10では、ダンパーの位置や有無が乗り手にどのような効果を与えているかに主に注目したい。ダンパーの目的は、衝撃を受けた後に乗り手が感じる不快な動きを軽減させ、より制御された振動吸収性をシステムに内蔵することであった。衝撃を受けた直後(図11)を拡大すると、スライダー位置やダンパーの有無によって差が生まれている。ここから、ダンパーは衝撃を受けた直後にリバウンドの戻りを13%軽減していることがわかる。
図11. 図10において衝撃を受けた直後のリバウンドを拡大( スライダー 1 = 最も振動吸収性に優れた位置、スライダー 2 = 中間、スライダー 3 = 最も固い位置)
このリバウンドの軽減量はまた、トレックの研究室でハイスピードカメラを用いて行ったライダーの腰の動きからも数値化できる(図 12)。新型Madone(スライダー1、ダンパーあり)と前Madoneとの縦方向の動きの差(図13)から、これらの効果が積み重なると、 ライダーの体に加えられる振動が大幅に軽減されることがわかる。これはつまり、あらゆるサスペンション技術の最大目的である。
図12. ハイスピードカメラで捉えた腰の動き
図13. 25mm高の1つのコブを越えた際の新型Madoneと前Madoneにおける乗り手の腰の動き
最後に、トレックはダンピング比を用いて、新型Madoneが前Madoneに対してどのような性能を表すかを求めた。ダンピング比は衝撃を受けた後の振動がどのように減衰するかを示す、 一般的に無次元の値である。言い換えれば、振動があるピークから次のピークへと減衰する速さを示している。手に持ったバスケットボールをある高さから落とし、地面からはずみ、動きが止まる頂点までバウンドさせる方法と考えてみよう。前の結果よりバウンドした高さが低くなることは、振動を吸収し、良くなっているということ。このような振動の一例を図13に示した。ここではそれぞれの連続するピークが前のものより小さくなっていることがわかる。これをある大きなコブを越えようとしているバイ クで考えると、サドルと乗り手の一連の動きをコブを越えた後にできるだけ早く元の安定した状態に戻すことが望ましい。この効果がより制御された快適さを生み、時間が経つと蓄積する疲労を軽減させる。ダンピング比が小さいと減衰の時間が長くなり、反対にダンピング比が大きいと、減衰はより速くなる。
図14. スライダー各位置における新型Madoneと前Madoneのダンピング比
(スライダー位置 1 = 最も振動吸収性に 優れた位置、スライダー位置 2 = 中間、スライダー位置 3 = 最も固い位置)
図14は、スライダーを各位置にセットした新型Madoneと前 Madoneのダンピング比を示している。これらの比を対数減衰率を用いて計算すると、新型 Madoneはダンピング比が44から61%向上していることがわかる。
トレックは従来より、MadoneのジオメトリーにH1とH2を用意し、それぞれに適した一体型バー/ステムコンボやヘッドセットス ペーサーを選べるようにし、理想のコクピットを実現できるようにした。以前のMadoneのバー/ステムコンボは一体型であったためサイズのオプションが限られ、バー/ステムコンボを交換するとなるとEmondaやDomaneなどの他のロードモデルで選ばれる組み合わせより高価になりがちだった。トレックはこれをフィットの幅を拡大するための機会として捉え、これまでと同じで今や当然となった一体型コクピットをMadoneに搭載させた。新型Madoneでは新たにH1.5 フィットを開発し、より多くのステムやバーサイズを選んだり、バーを前後に5度傾けられるようにした。この新たなフィットにより、性別を問わず多様なレース 向けのフィットを一体型コクピットで実現できるようになった。 MadoneをH1またはH2フィットのリムブレーキとディスクブレ ーキモデル(28種類のフレーム)を生産する代わりに、トレックは消費者目線で考え、各ブレーキモデルを1種類のフィット(H1.5)で作り、フレームの種類をシンプルにした。主な変更箇所は、フレームスタック、リーチ、ヘッドチューブ長である。新たなフィットはMadoneらしい走りの質が保たれるよう、それ以外のジオメトリーを変化させていない。ディスクブレーキモデルを新たに加えながらもリムブレーキモデルも引き続き用意するため、トレックのエンジニアは空気抵抗や重量をより数の少ないフレームで解析することができた。フレームサイズは各種ブレ ーキモデルで50から62cmである。新型Madoneのジオメトリー表を以下の図15に示した。このフィットで最も素晴らしいのは 新型ステムとバーでフィットを大きく変えられる点である。
図15. 新型Madone H1.5 フレームのジオメトリー
図16. 新型Madoneのバー/ステム CAD モデル
新型Madoneのバーとステムは従来のように別体でありながら、トレック独自のシステムとなっている。図16にバーとステムの展開図を示した。この新しいバー/ステムは、H1/H2フレームで用意された26種類の組み合わせと比べ40もの組み合わせを実現できる。また、バーを前後に5度傾けられ、フィットをさらに細かく調整できるのだ。 表4(下)は前Madoneと新型Madoneに用意されたバーとステムの各種サイズ一覧である。-7度のステムは業界基準の規格であり、-14度のステムは、新型Madoneで前MadoneのH1と同じフィットを実現するためだけでなく、さらなるフィットの幅を持たせるために用意されている。ステム長は、-7と-14度の両方で、90 から130mmまで選ぶことができる。バーの幅は前Madoneより1種類増えた38から44cm、形状は可変半径コンパクトフレア (VR-CF)を採用する。このようにフィットの幅が増えたことでフィットを変えることがより簡単になり、価格も手ごろとなった。
表4. 新型Madoneと前Madoneのバー/ステムの組み合わせ一覧
全く新しいリムブレーキは、機能性を高めセッティングを簡単にできるようデザインを一新させた。ブレーキアームは独立したスプリングテンション調整用スクリューでブレーキのセンター出しを行う。これによりブレーキパッドが磨耗してもパッドの位置調整を正確に行え、レバーを引く力を好みに合わせて調整できる。位置決め用スクリューは、センターウェッジを調整せずに23から 28.5mmまでのリム幅に対応させられる。
図17. 新型MadoneのフロントリムブレーキのCAD モデル
新たなリムブレーキの最大の変更点は、フロントブレーキの搭載位置である。これは、フロントブレーキをフォーク裏側に搭載させると、フォークとダウンチューブに一切の段差を設けず一体化でき、空力性能が高まることが判明したためだ。新しいフロントブレーキのカバーは、フレームとフォークの同色ペイントが施される。前Madoneと似たセンタープルデザインを用いることで、フロントブレーキのケーブルはステアリングコラム前側を通ってからステアリングコラム根元とヘッドセットのロワーベアリングの中を通り、フォー ク裏側に出る。リアブレーキもフロントと同じセンタープルデザインを採用し、トップチューブからシートチューブ裏側のダンパーキャリッジまでフレーム内を通り、風が当たるケーブル部を短く抑えている。
図18. 新型MadoneのフロントおよびリアのリムブレーキのCAD モデル、フレームに組み込んだ全体像
フロントブレーキ(ブレーキ、未塗装のカバーとケーブルストップ)の重量は152g、前Madoneと比べ約5g軽い。リアブレーキ(ブレ ーキとブレーキストップ)の重量は、前Madoneと同じ152g。タイヤクリアランスは25cを想定、ISOタイヤタイヤクリアランス規格に適合する販売しやすいサイズである。
ディスクブレーキの追加は、新型Madoneの研究開発段階における要であった。そして、空力性能とブレーキホースの配置が慎重に考慮すべき2つの改善点であった。ディスクブレーキはバイクのノンドライブ側に風がヨー角で流れてくると、空気抵抗 の増加につながることがある。そこで、社内の3Dスキャンソフトでディスクブレーキキャリパーとローターの詳細なCFDモデルを作製。リムとディスクブレーキの両方でケーブルを完全に内装させる場合、ヘッドセットのロワーベアリング内を通す方法をいくつか考える必要があった。トレックが思いついたある方法は、ロワーベアリングから上のケーブルをフォークのステアリングコ ラムに通し、そこから下にそれぞれの通り道を用意するというもの。しかし、ディスクブレーキ側はブレーキホースをステアリン グコラムからノンドライブ側のフォークレッグ内を通すことがより困難であった。
この問題を克服すべく、トレックはケーブルの通り道となるチューブを接着し、ブレーキホースをフォークレッグからステアリングコラムまで工具無しに簡単に通せるようにした。 ディスクブレーキなら、より太いタイヤを履くこともできる。新型 Madoneディスクブレーキモデルのフレームとフォークは、28cのタイヤクリアランスを想定、ISO タイヤタイヤクリアランス規格に適合するサイズである。
前Madoneに搭載され新型Madoneでもさらに空力性能を高めたIsoSpeedシステムは、またしてもシートチューブに実証済みのKVFテクノロジーの採用を可能にし、風を騙すシートチューブ形状と他にはない縦方向の振動吸収性を実現させた。このシートポストのヘッドは独立したピンチボルトとレールクランプシステムを採用し、傾きやセットバックを無段階で調整できる。 また、シートポストの新たな特徴であるウェッジ内蔵デザインが、シートマスト裏側の見た目をよりすっきりさせる。ウェッジクランプは外側になく、シートマスト裏側全体をペイントできるようになった。ポストには4種類のカラーが用意され、トレックのProject Oneでもカスタムできる。
最後にこのデザインの安全性を高めるため、Flare Rライトマ ウントをシートポストヘッド裏側に設け、クリップで装着できる ようにして、見た目をすっきりとさせた。リフレクターブラケットマウントはシートポスト裏側の溝にぴったりフィットし、 これもすっきりとした見た目に貢献している。
新型Madoneのシートポストと一体型ライトマウント / 内蔵ウェッジを示した新型Madoneのシートポスト
先述した通り、Madoneのフィットの幅を広げることがトレックのエンジニアにとって優先事項の1つであった。バーとステムを別体で作ることが最も思いつきやすい解決策だが、空力性能も高める必要があった。その答えが、空力性能に優れた一体形状で見た目をすっきりさせるフェイスプレートである。また走行中に手を置きやすくするため、新しいバーのトップ部は、後方にスウィープした形状となっている。以下の図で、前および新型Madoneのハンドルバーを並べて比較した。
後方へスウィープさせて握りやすくなった新型Madoneのバー(右)と前Madoneのバー(左)
ヘッドセットスペーサーは、2ピースのクラムシェルデザインを引き続き採用し、バイクを組み上げた後でもハウジングやケーブルを移動させずに簡単に着脱できるようにした。スペーサーの変更点は金型の成形線を減らしたこと、バイクの組み立てを簡単にする新しいインターロッキングデザインを採用したこと、そしてスタックサイズを2種類(5mmと15mm)用意したことである。最後に、ベアリングのトップキャップは一体構造となり、前Madoneでリアのリムブレーキケーブル用に設けられたNDS カットアウトは取り除かれている。比較図を以下に示した。
新型Madoneのヘッドセットスペーサー(左)と前Madone(右)
新型マドンはコントロールセンターも改良され、1つのパーツであらゆる仕様に対応し、ウォーターボトルの設置個所も空力性能が最も高まるダウンチューブ位置に移設された。機械式ドライブトレインの場合、コントロールセンターで前後のディレイラー調整を行える。フロントディレイラーの調整用ダイアルはOEMが進化したため、もはや存在しない。電動ドライブトレインの場合、 ここにDi2バッテリーとジャンクションBボックスの両方が収まり、充電用ポートはここではなくハンドルバーのバーエンドに移設される。また、リアディスクブレーキのホースも収納され、ダウンチューブ内でカタカタと音を立てることはない。
新型Madoneのコントロールセンター
Trek-Segafredo チームは新型Madoneの開発に何度も協力し、このバイクが他社製品だけでなく前Madoneより大きなメリットをプロアスリートにもみなさまにももたらすことを確認した。2017年12月、チームはシチリア島でMadoneの試作機1号をテスト。この初テストではヒルクライム、コーナリング、スプリント、快適さにおけるあらゆる性能面を前Madoneと比較した。このテストで得たフィードバックから、2種類のラミネートを組み合わせてさらに洗練させ、調整式振動吸収テクノロジーを詳しく調べ上げ、バー/ステムと手が触れる箇所を改良した。 2度目の重要なテストライドを2018年1月にマヨルカ島で行った。Madone 試作機2号目へのチームのフィードバックから、新たなラミネートの組み合わせがクラス最高のハンドリング性能を発揮し、新H1.5 ジオメトリーは最高であることが確証された。
また、テクノロジーや特徴を改良したことで、前Madoneをはるかに上回るバイクが誕生したことも裏付けられた。これは、トレックがクラス最高の製品を作り、そしてそれを上回るものを改良できるという証拠であり、バイクブランドにとってプロサイクリン グチームを抱えることの重要性が示された。
組立中のマドンSLR Disc
ディスクオイルのブリーディングホールはここにあります。
旧モデルの特徴でもあった、ハンドルを切ったときに開くウィンドウはなくなりました。
アルミ+カーボンコンポジットリムでもホイール外周までオールブラックで統一できるので
すごく洗練されてかっこいいです。これもディスクブレーキならではの恩恵ですね!
※マドンSLR専門分析の章:data source
http://trek.scene7.com/is/content/TrekBicycleProducts/TK18_Madone_Whitepaper_EN-GB.pdf