- 2020.09.12
- [2021モデル](エモンダ)Emonda SLR試乗レビュー![ヒルクライム・平地]
「Madone SLR(マドンSLR)」はトレックの考えるエアロロードバイクのフラッグシップとして発表されました。2019モデルはSpecialized Vange(スペシャライズド・ヴェンジ)もフルモデルチェンジを果たし、最先端エアロロードNo1の決定戦のような様相となっています。
今回は、ちばサイクルで用意した「Madone SLR6 Disc」を使って、当店スタッフの真保(しんぽ)が約100kmの実走レビューを行いました。エアロロードとしての特徴や、ディスクブレーキ付ロードバイクの使用感についてレポートしていきたいと思います!
・エアロロードの乗り心地は?調整式ISO SPEEDの印象について
・オールラウンダーバイクとして使える?
・ディスクブレーキの使用感は?
今回使用した車体は、トレックのセミオーダーシステム「Project One」ではなく、完成車を試乗しました。以下、代表的なパーツ構成です。
フレームセット |
Madone SLR H1.5 / 52cm |
変速システム | SHIMANO ULTEGRA R8000 |
ブレーキ | SHIMANO ULTEGRA R8070 |
ホイール | Bontrager Aeolus Pro5 / TLR (アイオロス プロ5 / チューブレスレディ) |
ハンドルバー | Madone specific adjustable aero VR-CF(新型専用ハンドルバー) |
サドル | Bontrager Montrose Elite |
これまで、マドンシリーズになかった「ディスクブレーキ」装着車を試乗します。エアロロードとの相性などはあるのでしょうか。また、専用品ながら前作とは形などが大きく変わった新型ハンドルバーを装着しています。ここらへんも気になるところです。
さて、ここからいよいよレビューに移ります!
テストコースとして選んだのは「平地」「海岸線のアップダウン」「強い向かい風がでやすい」とエアロロードの特徴が出やすい神奈川県・三浦半島を周回するルートを選びました。当店でご購入いただいたお客さまにも人気のエリアで、写真のように南国感のあるエリアもあったりします。
それでは、レビューにうつります!
マドンSLRが徹底的にこだわっている「快適性」。ツール・ド・フランスをはじめとした長距離レースでも体力を温存して走ることができるように工夫をしています。その核となるシステムが「ISO SPEED(アイソスピード)」です。
マドンSLRは、前作で固定式だった部分をスライダー調整式に変更することによって、乗り心地をカスタマイズできるようになった!…ということなのですが果たしてどうなのか?サイクリング中にいろいろ調整してみました。
トップチューブ下のスライダーを調整することで衝撃吸収量を調整できるISO SPEED
ISO SPEEDの調整スライダーを変更すると、確かに乗り心地が変わります。同じでありながらパフォーマンスが大きく変わるので非常に不思議な感覚でもあります。
スライダーを移動させると振動をカットする効果は高く現れました。路面が荒れている箇所では特に感じることができ、ペダリングを止めずに前に進んでいける。といった感触が良かったです。また、コーナーに進入したときにバイクが曲がっていく感触も違うんだなと感じました。ちなみに私の場合は普段乗っているエモンダSLRと近いなと感じました。
また、フロントフォークががっしりとしているわりに乗り心地が良く感じるのは、今回リニューアルしたハンドルバーの形状も影響していると感じました。手前に沿っている形状は独特ですが、フィット感もよく適度に衝撃吸収してくれている印象です。
硬くするほうに調整があるというのはどういう意味だろう?と思っていましたが、Softer側に変更したときにも感じた「バイクの反応性」や「コーナー進入時のバイク反応」などに影響することが良くわかります。
ちなみに、私がStiffer側したときに感じた印象としては「ペダリングしたときのバイク反応が鋭くなる」「コーナーでバイクが立っていく(=少々外に逃げる)」といった感覚がありました。
様々なシーンでいろいろいじってみた結果わかったことは調整式ISO SPEEDにしたことで、ライダーの体格や感覚にあわせてバイクの衝撃吸収性・応答性・コーナー性能をチューニングすることが可能となったというバイク=マドンSLRということです。
これは兄弟モデルである「ドマーネSLR」にも同じことが言えますが、一台のバイクでここまで瞬時に乗り心地をチューニングできるということは非常に面白いギミックだと思います。
エアロロードというと「平地特化」「高剛性ゆえにロングライド適性が低い」と、形が似ているTTバイクの特性に近いという印象を持っているかたが多いと思われます。(店頭でご質問を受けるときもよく挙がります)
このマドンSLRは、その点どうなのか?というところについてお伝えしたいと思います。
私が普段乗車している「エモンダSLR」も軽量ロードの中では剛性の高い車体だと思っていますが、それを上回る剛性があるな。と感じました。ただ、高いパワーで踏んでいかないと前に進んでいかない…という感じはなく、高ケイデンス/低トルクで走らせてもしっかりと加速していけます。
また、ISO SPEEDの調整をしていくとペダリング反応が変化するため、自分にとって最適なセッティングが見つかったときは剛性の高さがネガティブに働く印象は少なかったです。
縦剛性が非常に高そうなデザインなので、ダンシングするとエモンダとは感覚が大きく異なるのだろうなーと思っていましたが、意外と普通のロードバイクと同じ感触でした。ダンシングしたときのバイク反応も軽快で、ロードレースやロングライド中に出てくる登りには十分対応できそうです。
むしろ、パワー伝達力の高さが2~3%の緩い坂道ではポジティブに働き、軽量なヒルクライムバイクよりも加速感は良かったです。
他にもオーソドックスなロードバイクと比較することを意識して乗っていましたが、本格的なヒルクライム以外のシチュエーションでは、一台でこなせると感じました。トレックの3カテゴリでマドンが気に入ったけど、平地特化型だとな~といった悩みはあまり持たなくても良いと思います。
今回の試乗車は私にとって「初めてのディスクブレーキ付ロードバイク」ということもあり、乗る前に気になるポイントも色々ありました。今回はそういったポイントに対する実際乗ったときの印象を書いていきたいと思います。
これまでのキャリパーブレーキ(リムブレーキ)と比較しても、制動力のかかりかたやブレーキ時のバイクの挙動にはあまり大きな違和感を覚えず自然に乗れました。
このことを店長に話してみると、「ロード用ディスクブレーキは現行になるまでは非常に細かなモデルチェンジを行い、ロードバイクライダーにとって自然なフィーリングになるよう最適化されたと思う」と話していました。
ディスクブレーキの最大のメリットは「ロングライド時の上半身に残る疲労感」がリムブレーキに比べて大きく軽減されるという点だと思います。指先の握力だけでしっかりと制動力を発生させることができるためか、ブレーキ回数の多い区間を走った後でも疲労感が少なく感じました。
これは想像していましたが、実体験で改めて理解できました。車体速度が高速になる下りや、ブレーキの性能が試されるコーナー前の減速シーンで、精密に制動力を調整できます!リムブレーキでも不満はないのですが、ディスクブレーキは1ランクどころではない精密さでバイクをコントロールできます。
今回は、晴天時のコースで試走しているので体感できていないのですが、悪コンディション(雨天等)で走ったとき、リムブレーキとの差を感じるのではないかな。と思いました。
リムブレーキのカーボンホイールはブレーキ特性が変わったり、ホイール耐久性の問題も出てきたりするので「決戦用ホイール」としてカーボンホイールを大事にしていました。
一方、ディスクブレーキならカーボンリムが傷む要素はほとんどないうえに、制動力も精密で高いため、カーボンホイールのデメリットがほぼ解消されています。日常使いでもカーボンホイールを目いっぱい使えるのは普段のサイクリングがより快適になるのではないでしょうか。
今回、Madone SLR6 Discを試乗して感じたことをまとめます!
・スライダー調整式ISO SPEEDでは「乗り心地」のほか「バイク反応性」「コーナーの挙動」も変化する。
・エアロロードながらロングライド性能・ある程度のヒルクライム性能を有しているため、オールラウンダーとして使用可。
・ディスクブレーキも成熟してきていて、乗り換えに関する不安もほぼ解消した。
今回のインプレ結果はいかがでしたか?もしここに書かれていない点で疑問がある際は、ぜひ店頭でご相談下さい!以上、マドンSLR Discレポートでした!(スタッフ・真保)