自転車店スタッフでも「サドルを決めきれない事」ってあるんです!
去年の9月にMadone9が納車されてから、色々試しながらサイクリングしてきました。あらかたのセッティングは決まってきたものの、サドルだけはこれだ!と思えるセッティングが出ずに人知れず(?)悩んでいました。
僕はこれまでSelle San marcoの「コンコールライト」というモデルをベースにセッティングを出してきていて、実際にとても合っていると感じていました。そしてMadone9にはBontragerの「セラーノRXL」を納車後から使用していたのですが、この二つのサドルに明らかな違いを感じていたのです。
この二つのモデルにどういった違いがあるのか?この部分を解明すべくある場所へ向かいました。
「プレッシャーマッピング」とは?
向かった先は相模大野コンセプトストア。僕は、ポジションに悩んだときの駆け込み寺として利用しています(笑) この支店にはTREKがプロ向けフィッティングプログラムとして開発し、ホビーサイクリストにも利用できるようにした「
Precision Fit(プレシジョンフィットと呼びます)」用の専用機材、そしてサイクリング中の理想的なポジションを熟知するフィッターの沖山が機材を使って、受講者の体の動きを徹底的に分析してくれるのです。
そして僕は今回「プレッシャーマッピング」という機材を使った、サドルに関する分析をしてもらいました。これはペダリングした際に、サドルにかかる圧力、加重範囲、バランスなどをリアルタイム解析できるプログラムです。先の2モデルを解析するとどのような違いが見えるのか楽しみです!
コンコールライトをプレッシャーマッピングしてみる
左:平地 右:ヒルクライム を想定したポジションを解析した結果(クリックで拡大)
はじめに、具合が良いと感じている「コンコールライト」にかかる圧力を解析してみました。このように可視化されるので、自分で確認しやすいのがこのツールの良いところ! おおまかな見方を説明すると…
数字:圧力を数値化したもの(単位はミリバール)
ヒートマップ:色がついている箇所が圧力がかかっている場所。青→緑→赤の順で圧力が高い
赤線:ペダリング時、体の重心の移動軌跡と移動量を平均化したもの
赤、青、緑のボックス:サドルの範囲分け。このボックスの3点が交わる部分がサドル中心
まずは平地の時。まずは圧力についてみていくと、サドル左側から中心部にかけて青い帯上にマップが表示されています。この部分に圧力が集中していることが分かりますが、サドルの全範囲と比較しても広い範囲に圧力が分散していることが読み取れます。また圧力数値も200前後に収まっていることが分かりますね。
次にヒルクライムを想定したポジションの時。平地の時に比べるとサドル後方に重心が下がり、サドル後部左側には、先ほどより高い圧力が1部分に集中してかかっています。
沖山曰く、圧力数値自体はそんなに高いものではないそうです(軽量な人なら100ミリバール台、重量級の人は600~700ミリバールに及ぶこともあるとか) そう考えると、体重は軽量ではない僕における数値としては比較的低めということが分かります。また、赤線が右上がりにずれていますが、これはペダリングに関する癖が見えてきます。僕は以前から左足のペダリングが右足に比べると強いことが分かっています。左脚に対して、右足が同じような力でペダリングできずに、重心点が左にずれていることを読み取れるのは非常に興味深いですね。
ちなみにサドルの前後バランスをより詳細に確認することも出来ます。平地の時は、やや後方といえる重心点が、ヒルクライムになると、明らかに後方にずれています。これは自然な事なので強く意識する必要はなさそうですが、あまりにも前後バランスが悪い場合には是正の必要があるそうです。
先ほど、ペダリングの癖が分かるといいましたが、このグラフはより分かりやすいと思います。
左に強い圧力がかかっている(=右のペダリングが弱い)のが一目瞭然…。こう見せられるとペダリングの下手さ具合がバレてしまいますね(笑) 身体的特徴から必ずしも50:50のバランスにする必要はないそうです。
セラーノRXLではどうなるのか?
続いて、セラーノRXLの解析を行います。平地に比べ、ヒルクライムのほうが特に違和感が強いので、ヒルクライムポジションの解析を行ってもらいました。結果はこれまた一目で違う点が出てきます!
1.サンマルコの圧力300前後に対してセラーノでは528~654ミリバールと高い圧力。
2.赤線(重心を示す)が、コンコールライトに比べると、後方に寄っている。
3.サドル中央部にはほとんど、圧力がかからずにサドル後部に集中した形となっている。
この結果には驚きました。別段、僕は乗り方を変えていないんですよ?しかしながらここまで対照的な結果が出ると、驚きを隠せません。沖山に、ヒルクライムで最適なマッピングとは?という質問をしたところ
サドル加重範囲が広く、また中心部を使った圧力分散がなされている事がおススメ。
ペダリングの左右バランスがより良い(赤線の角度がなく、平行になっている)事を目指せるもの。
という二つのポイントを満たせるサドルが良いとの返事をもらいました。
形状を改めて確認してみる
コンコールライトとセラーノRXL。2つのサドルを僕と沖山二人で観察してみることで、核心に迫ってみます。
並べてみると、全然形が違う二つのサドル(上:セラーノRXL 下:コンコールライト)
二つのサドルを見比べていると、サドルサイドがほぼ垂直に落ちているコンコールライトに対して、丸みを帯びたエッジがあるセラーノRXL。この形状の違いが、ペダリング時に「太ももとサドルが擦れる感覚」となり、違和感を覚えるポイントだろうと思われます。
サドル中央部を観察してみる
サドルを正面から見てみます。サドルノーズ(先端付近)の形状が違いますよね。セラーノはサドル中央の山形が緩く、広くつくられています。一方でコンコールライトは盛り上がっていて、狭い山となっているのがおわかりでしょうか?この違いをどうみるか、沖山に質問してみると「東さんの恥骨弓※のアーチがコンコールライトの形状によりマッチしているので、安定したペダリングが出来ているんでしょうね」との事。なるほど!コンコールライトでヒルクライムすると、ビタっとポジションが決まる感覚というのはここから来ているのか?と納得しました!
※恥骨弓とは:恥骨と坐骨の下縁の事。由来は弓状になっている形状から
しばらく、コンコールライトを使用してみます!
プレシジョンフィッターからお墨付きを貰ったコンコールライト。僕も大きな悩みが一つ解消したので、しばらくはMadone9+コンコールライトの組み合わせでポジション出しに専念してみたいと思います!
そして、僕のようにサドルやポジション全体でお悩みの方は、ぜひプレシジョンフィットを受講してみてください。なんとなく…ではない根拠のある説明で突き詰めていくことで、ポジションの悩みを解決しましょう!
スタッフ・東